音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

奇才、天才―田淵智也さんについて

 

 

(非公式の動画で申し訳ない)

 

 女性声優4人で結成されているグループ、スフィアの「Vivid Brilliant Door!」という曲である。アニメ「電波教師」の第2クールOP主題歌だった。

 いきなり何の話かというと、この曲はわたしが初めて知った田淵曲なのである。ご存知の通り、彼はアニメや声優にもかなりの数の曲を提供している。その中のひとつに、わたしは出逢った。

 正直、この曲を知った当初は作った人など知らず「好きなアニメのOP」という認識に過ぎなかった。しかし、歌詞や鳴る音楽のキャッチーさに惹かれた小学生のわたしはこの曲をすぐに覚え、軽く歌えるまでになった。ここに田淵曲の凄さがあるのだ。

 “無意識に覚え、口ずさんでしまう”。

 彼はそんなことを意識して作っていなかったのかもしれないが、わたしの心は確実に捉えてしまっていたのだ。彼の作る音楽を。それから、これから出逢うUNISON SQUARE GARDENというバンドを。

 

 

 

 そんな田淵曲との出逢いから数年が経ち、わたしはUNISON SQUARE GARDENを知った。あの時の曲が田淵曲だと、凄い人が作った曲だと知ったのもこの時だった。

 単純にびっくりした。こんなところにも繋がりがあったんだと思うと必然的にこちらの音楽界隈へと足を踏み入れることになる運命だったんだという気さえしてくる。(ちなみにユニゾンで最初に知った曲はシュガソン。)

 

 先程の「Vivid Brilliant Door!」という曲を今になって解剖してみると、田淵にしかできない言葉のからくりだったり、音の入れ方がある。

 

スタートしてどれくらい来ただろう

もう振り返ったってあれれ蜃気楼?

 

あぁ 現実と希望を繋げてくれるドアは

どこだろ

 

やりたいことだけ ほらやってなくちゃ

僕が僕でいられない

 

 アニメの内容(詳しくは省略)に沿りつつ、歌詞には田淵らしさを入れ込み、ポップな音楽はスフィアに合うように。この曲に限ったものではないが、田淵が作る曲は全てが計算し尽くされているのだ。(特に女性声優に対しての提供者曲はポップに振り切っている曲が多いように感じる)

 

 

 

 今となってはは田淵のことを凄い人だ、尊敬している、等々…わたしは色んな場面で散々言っているが、最初のイメージは「めっちゃ怖い人」だった(主にライブでの表情が)。「天国と地獄」「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」あたりが怖かった…良い意味で狂ってる

 舞洲がわたしのユニゾン初ライブだったのだが、遠すぎてだいたいはモニターを見ていたわたしでも彼の魅力に気づいてしまった。ベースの技術の凄さ、弾けるような笑顔、優しいコーラス……

 

 そんな舞洲ライブの後、機材車ラジオを聞き始め、同時に彼のブログの文章を狂うようにたくさん読んだ。

 …全く怖い人じゃない。むしろ、たくさんの人々を不思議と惹きつけてしまう素敵な人だ。

 

 わたしが忙しない日常生活で見落としていた、どこか懐かしい言葉を歌詞に使う。言葉にはユーモアがあって、いつもハッとさせられる。時にはかわいらしい無邪気な少年になる。誰よりもロックが好きで、現実を見ているけれどその時にできる楽しいことを考える人。

 

 音楽でどこへでも連れていってくれる魔法使いのひとり。天才、なんて一言で括っちゃだめだな。他の人が思い付かないようなことをぽんぽん思い付く奇才だし、常に「楽しい」を追究している。わたしの持つ言葉では全てを表現できないほど魅力的な人。

 

 お誕生日おめでとうございます。あなたのことが大好きです。

 生まれてきてくれて、ありがとう