音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

XIIXの魅力と闇深さについて

 UNISON SQUARE GARDEN斎藤宏介と、Superfly、ゆず、sumikaなどのサポートベース・楽曲のアレンジを務める須藤優によるバンド、XIIX(テントゥエンティ)。1stアルバム「White White」の発売から早いもので8か月が経ったが、今回はそんなふたりの魅力と闇深さについて、情報を少しおさらいしながら書いていこうと思う。

 闇深さ、といっても彼ら自身ではなく音楽的にということなのでご安心を(彼らが本当に闇深かったらそれもそれでとっても魅力的だと思います…)。

 

 

①XIIXの成り立ちについて

 斎藤と須藤は10年来の付き合いになるそうだ。ライブハウスで共通のミュージシャンを介して知り合ったそう。須藤はユニゾンでの斎藤を最初に見た時はバキバキでスタイリッシュ、クールな王子様という印象を受けたそうで、対して斎藤はせめせめな印象を須藤から受けたそうだ。20代の頃から定期的に会い、お互いに良いミュージシャンだと意識していたと語る2人。この頃から現在の信頼関係は出来上がっていたのかもしれない。

 斎藤はUNISON SQUARE GARDENの活動とは別に、個人で「SK's session」という企画を開催した(これについては詳しく存じ上げないので割愛させて頂く)。その企画にて、斎藤とともに舞台に立ったのが須藤だった。XIIXの結成について、斎藤はこう語っている。

 

ニゾンとは別に、音楽を表現する場所が欲しかったんです。

ニゾン以外で周りにいたかっこいい奴が須藤くんだった。

 

(2020 1,22 FM OH! 「SCOOL OF LOCK!」より)

 

 

②楽曲について

 お互いを「すってぃー」「宏ちゃん」と呼んだり、バレンタインの話で盛り上がったり、ラジオではしばしば「これどう?」といったお互いを気遣う会話が展開されるように、とても仲の良いふたり。ユニゾンでは見せない斎藤が見れてしまうのもこのバンドの魅力である。XIIXの楽曲にも表れているように、UNISON SQUARE GARDENとは完全にモードが違う。

 

 

 1番といっていいほどユニゾンとの違いを分からせられる、「Stay Mellow」。

 このMVを最初に観た時、わたしはかなり動揺してしまった。UNISON SQUARE GARDENで見るいつもの“斎藤宏介”はどこにもいなかったからだ。この人はこんな引き出しをも兼ね備えていたのかと思うと、なんだか恐怖さえ感じてしまいそうになる。ミュージシャンとしての音だけではなく、演技でも楽曲の世界を表現してしまうところが凄い。

 

 実はこのMVを観る前に、同じく1stアルバム「White White」収録曲の「LIFE IS MUSIC!!!!!」を先行してラジオで聴いていたのだが、想像の上をゆく楽曲で衝撃を受けたことを思い出した。タイトルに“!”が付いていたからポップではじけた感じの曲かな、と安直な考えで聴いたのが良くなかった。聴いた瞬間、音の全てに圧倒されてしまった。この曲はMVがないので世界観は想像するしかないのだが、端的に表現するとするならば、とても大人な香りがする曲だと思う。

 

 わたしが最初にXIIXに抱いていたユニゾンとの比較イメージは、「ユニゾンは紅茶、XIIXはコーヒー」というものだった。今わたしが両バンドに持つイメージとは少し違っているが、例えとしては近い。わたしはコーヒーが苦手で紅茶しか飲めないのだが、なんとなく苦く、大人の雰囲気を纏うXIIXは聴き手の年齢層が上になってくるように思う。このバンドの持つ音楽の良さは、何度も繰り返し聴き込まないと分からないようになっているのだ。

 

③楽曲の世界観について

 アルバムを手にする前は、斎藤宏介がどの曲を作詞したのか気になっていた。ユニゾンで彼が作詞作曲した曲は「三日月の夜の真ん中」「スカースデイル」の2曲。どちらも純粋なラブソングで素敵な曲だったから、次に作られる曲が楽しみで仕方なかった。そんな中解禁されたのが「Stay Mellow」のMVだった。

 

 斎藤宏介の才能の振り幅がおかしい。こんな妖艶な顔もできるのかと今までに増してさらに惚れ惚れしてしまった。それに加え、アルバムの歌詞カードを見て彼が全ての楽曲の作詞を手掛けたと知り、良い意味で言葉を失ってしまった。インスト曲を除く11曲、彼が言葉を紡いだ。わたしはそれだけの事実で卒倒しそうになってしまった。

 ユニゾンでは2曲、ましてや田淵智也のようにプロデューサー業として曲を作っていたわけではないのに、これだけの曲数を1つのアルバムとして一度に発表されたら供給過多もすぎる。そして、去年はUNISON SQUARE GARDENの結成15周年イヤーだった。ユニゾンの活動の裏でXIIXの楽曲レコーディングや計画が進められていたのだから凄いにも程がある。

 

 XIIXの楽曲たちは、現代に生きるわたしたちの好きなものの詰め合わせのようだとアルバムを買った当初から思っている。わたしは音のアレンジメントのことを背景の音、とよく表現するのだが、XIIXにおけるその音は最近のボーカロイドYouTube発祥のアーティストの曲によく使われる音なのだ。楽器や楽曲のアレンジメントには詳しくないので分からないが、最近だとYOASOBIやヨルシカなどのあの背景の音に似ている気がする。

 様々な現場で音楽を奏で、それと同時に学んできた須藤優のアレンジが実に秀逸であり、斎藤の詞と歌声を最大限に引き出せる音の具合や風味を知りつくしている。そんな音が集結したアルバムを聴いてしまっては即座に好きになるに決まっているのだ。正直言うと、XIIXユニゾンより前に知っていたら絶対にわたしの中でぶっちぎりで1番になっていたバンドがこのXIIXである。田淵曲の凄さに気が付かずに一生を終えるところだった。危ない。それくらい、人々を虜にしてしまっているのだ。

 

 今年の6月には「in the rough」という新プロジェクトを始動させているXIIX。まだ数回しか生のライブは開催していないにも関わらず、ふたりの実力やこのプロジェクトも相まって期待度はかなり上昇している。これからの活躍も益々楽しみだ。