音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

行く先に一筋の希望を【ワンフレーズレコメンド1月21日】

・本記事はハグルマルマさん(@haguruma_usg)主催の企画『ワンフレーズレコメンド』1月21日分の記事です。企画の詳細はこちら⇩

 

・前回1月19日分 担当 ナツさん(@unfinisheddaisy)の記事はこちら。UNISON SQUARE GARDENの「harmonized finale」についてのお話です⇩

 

ハグルマルマさん、素敵な企画を主催して下さりありがとうございます。わたしの目線から見る世界と、他の方から見る世界が違うことをとても新鮮に感じております。

 

 

 ワンフレーズレコメンド企画も後半に差し掛かった本日は、UNISON SQUARE GARDENの「CIDER ROAD」というアルバムより1曲目「to the CIDER ROADよりこの一文。

本当は弱さは強くて 涙こそ道しるべ

このフレーズに幾度となく救われてきた。わたしにとって大切な曲、アルバムとなった理由でもある。

 

CIDER ROAD」は先述した通り、UNISON SQUARE GARDENが2013年にリリースしたアルバムだ。アルバムの始まりとして“希望”を提示する「to the CIDER ROAD」は、要約すると“物知りの雑誌が謳う 今年の流行は何だっけ(=本当は流行に馴染めない)”“今どこ行こうかだけを考えます”など、2013年代のユニゾンを具体的に映し出している。歌詞自体にUNISON SQUARE GARDENとしての意思表明が大いに表れているのだ。

ニゾンだと他に好きな曲はたくさんあるし、人生を救われた曲もこの「to the CIDER ROAD」だけではない。この曲をピックアップした理由は“『UNISON SQUARE GARDENの意思表明』にファンとして勝手に乗り移り、人生のテーマソングとなったから”だ。

 

 少し話が逸れるのだが、わたしの高校時代の話をしよう。長くなるかもしれないが、どうかお付き合い願いたい。

わたしは高校生の頃、放送部として3年間活動した。最後の1年は流行病のせいで思い通りに活動することがままならない状況だったが、それでも2年間は活動をしていた。

おそらく知られていないと思うが、放送部にも運動部と同じように大会が存在する(その1つが「NHK杯」だが、余計に話が長くなってしまうので割愛する)。大きめの大会は年に2つあり、わたしは1年生から大会が中止になる寸前のものまで出場し続けた。一口に“放送の大会”といっても、もちろん簡単に賞を獲ることはできない。これを読んでいる方は放送部といえばどんなイメージを抱くのだろう?物凄く簡易的に言うならば『声優やアナウンサーを目指す者のひしめき合い』といったところだろうか(※地域差はあると思うが、わたしの県では声を使った仕事に就きたいから放送部に入部した人が多かったし、実際わたしも声優志望だったので入部した経緯がある)。

大会の話に戻ろう。放送部の県大会予選は200人くらいの出場者がおり、その中から受賞者できるのは上位40人ほどである。毎回何らかの形で大会には出場したが、賞を獲ることが出来なかった。その度にわたしは悔し涙を流していた。当時はまだ1年生だから実力として仕方ない部分もあったかもしれないが、同い年の部員は出場毎にとんとん拍子に賞を獲っていく。ひとりだけ受賞歴のないまま2年生になろうとしていたわたしは、練習しても練習しても上手くなっている気がしない焦りと受賞出来ない悔しさで、一時は「放送部を辞めよう」と考えた。

「退部したい」と考えていた高校1年生の冬、小さめの大会があった。「受賞することはないけれど点数はつけてもらえるから自分の実力は分かる」といった風な。退部したいと思っていることはまだ誰にも伝えていなかったから「とりあえず大会だから出なきゃな」くらいの気持ちで、それでいて「大会だから出せる力は出さなきゃ」と思い、全力で挑んだ。自分でも上手く出来た自信はあったし、出番が終わって妙に達成感があったその日、わたしは放送部に入部してから初めて同期の部員の点数を超えた。点数が判明した時に脳内に流れ出したのが、UNISON SQUARE GARDENの「to the CIDER ROAD」だった。

本当は弱さは強くて 涙こそ道しるべ

「to the CIDER ROAD」2番のサビの一文が、そっくりそのままわたしに映し出された。すごくすごく弱かったし悔しくて数え切れないくらいに泣いた、わたしのことだと思った。

単純な言葉にはなってしまうが、救われたのだ。彼らの音楽に。

わたしは『弱さ』を『ただの弱さ』としか捉えていなかったから目から鱗が落ちるような表現に驚いたし、涙は道しるべになるのだと初めて知った。“涙の数だけ強くなれるよ”という有名なフレーズがあるからそれに囚われてしまっていたのだ。涙が道になるだなんて思わなかった。

 

大袈裟ではあるが、UNISON SQUARE GARDENのおかげで放送部を辞めずに、続けていく決断が出来た。その結果、部活動を通じてたくさんの人と関わりを持つことができたし、『声優』ではない叶えたい夢も持つことができた。高校3年間の活動は、わたしの財産になった。

(余談だけど高校1年生の時に大会で出会ったユニゾン好きの他校の先輩、元気にしてるかな…)

 

 流行りに乗るわけでも、ものすごく売れて大きな会場でライブをしたいというわけでもない彼らは、バンド界隈の中で“異端”と言えるのではないかとわたしは考える。ライブの序盤、毎公演のように「自由に楽しんでって下さい!」と観客に呼びかける斎藤宏介がそれを体現しているように。ライブ会場の中では、彼らの世界の中では、ファンは自由に羽根を伸ばしのびのびと過ごすことができる。魔法にかけられたシンデレラのように。

 

上記は昨年8月にわたしも参戦した「CIDER ROAD Revival」の映像だ。彼らのライブではお馴染みの入場曲である、イズミカワソラさんの「絵の具 r-r ver.」に続いてイントロが流れ出すのが「to the CIDER ROAD」。同期音とはいえ鳥肌が立つような…サイダーのようにしゅわしゅわと弾けるイントロに、これから彼らが奏でる音への希望を感じる。

本楽曲はUNISON SQUARE GARDEN初の配信ライブ「LIVE(in the)HOUSE」(※2020年7月15日開催)でも演奏されていたから、演出として記憶に残っている方もいるのではないだろうか。背景にあるパネルに映し出されるサイダーが弾けるような絵と、とびきりの笑顔で楽しそうな3人の影。いついかなる時でも、UNISON SQUARE GARDENはわたしにとっての希望でいてくれると心の底から感じた瞬間だった。

 

 わたしはこれからも田淵智也の言葉に感銘を受けるのだと思うし、斎藤宏介の音楽愛に心を奪われるのだと思うし、鈴木貴雄のドラムに感情移入するのだと思う。

彼らは誰かの為に音楽を奏でるのではなく、あくまで「自分たちが楽しい」からバンドを続けている。UNISON SQUARE GARDENの音楽にリスナー側が(勝手に)乗っかって、楽しんで、希望を貰う。そんな平行線の関係性を、わたしはこれからも続けていたい。勝手に元気を貰うから、どうか末永くUNISON SQUARE GARDENというバンドを続けてほしい。ずっとずっと存在して、わたしが生きるための理由になっていてほしいのだ。

 

 

ワンフレーズレコメンド企画、次回 1月23日の担当はメイさん(@mei_miyazato)です。

どんな語り口で、どんな楽曲を紹介して下さるのか…今からとても楽しみにしております。

 

それでは今回はこの辺りで。