音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

その瞳に惚れてみて、最大限の愛を魔法にして【MODE MOOD MODE SENTENCE】

●この記事は、ナツさん(@unfinisheddaisy)主催「MMM_SENTENCE」1月17日(7日目)の担当記事となっております。企画概要の詳細は以下の記事よりご覧ください。

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 「君の瞳に恋してない」が大好きです! 

お話の進め方が様々ある中で今回は初心に戻り、ひたすらに愛を語るだけの記事となっております。以下目次です。お好きなところからどうぞ!

 

1.詞について

 「君の瞳に恋してない」の何が好きって、まず初めに歌詞が良いところ。UNISON SQUARE GARDENの楽曲の中でも、特に恋や愛に関する曲は学生の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれるような、とても綺麗で儚いものばかりです。標題の曲の前に紹介させて頂くものとして、「夏影テールライト」と「フライデイノベルス」を例に挙げて見ていきます。

君の声をふと見つけてしまう

ダメだよ、ほら近づきたい

まだ間に合うって言い聞かせた

間違いにしないでよね

Miss.テールライト

-「夏影テールライト」より

 

Friday 君を待ってる時間

待ってる時間は辛くないけれど

冷静さは保ってらんない!

動悸に似た胸騒ぎの直後

曲がり角 見覚えのある足音

- 「フライデイノベルス」より

“声”を“見つける”だったり、“見覚えのある”“足音”だったりと、一般的に主語と動詞の関係性としては使われないものを彼は採用しているのです。楽曲中に良い意味での引っ掛かりを持たせて「もう一度聴いてみたい」と思わせる工夫がされています。

「君の瞳に恋してない」に関しては、タイトルから「君の瞳に…恋してない…??あれ??」と疑問に思ってから再生ボタンを押すこととなりました。

いざ聴いてみると、可愛らしくてちょっぴり難解な詞の数々。見かけは最高のタイトル詐欺で、曲中には最高の魔法使いが居たのです。

せめて君くらいの声はちゃんと聞こえるように

嵐の中濡れるくらい

構わないからバスタオルは任せた

上に紹介した2曲よりはまだ読み取りやすい歌詞かな?とは思いますが、この曲はサビでの展開にきゅんきゅんが止まりません。「君くらいの声は聞こえるように」とまぁまだ友達なのかな~と思える距離感。ただ次の一節では、嵐に濡れてもいいからとバスタオルを任せてしまっている。

さらに次の節ではこんなことを歌っています。

金色に揺れる太陽

照らす世界でもうちょっと

生きてみたいと思ったのは

君のせいかも

普段は「UNISON SQUARE GARDENはファンの手助けをするだけ」と仰っている田淵さんが書くとは思えないような距離感近めの歌詞に、軽く可愛さを覚えてしまいます。ユニゾンのこういうちょっぴりツンデレなところにわたしは心酔していて…本当に魔法使いに魔法をかけられているような幸せを感じますし、もういっそのこと死ぬまでその魔法にかかっていたいとさえ思ってしまいます。

 

2.メロディラインについて

 田淵智也さんの作るメロディーというのは「これ手掛けたの絶対田淵さんじゃん…!」と、分かりやすく特徴的なものがあるとわたしは思っています。わたしは音楽理論に詳しい訳ではないのではっきりとは申し上げにくいのですが、ユニゾン以外に他のアーティストさんへと提供されている曲を聴いても田淵智也さんが作り手だと彼の色が濃いものが多いです。どの曲でも言えることとして、田淵智也さんの作る楽曲たちは不思議と飲み込みやすく出来ているんですよね…ユニゾン以外だとこの曲が分かりやすそうです。

今回、例として紹介させて頂くのはLiSAさんの「赤い罠(who loves it?)」という楽曲です。田淵さんはよく彼女に楽曲提供をされているのできっとこの曲のことを知っている方もいらっしゃると思います。ちなみにこの曲は父に聴かされて出会ったのですが、第一印象は「(BPMについて)はやっ!え!はやすぎやん!?」という感じでした。後で田淵智也氏が作ったと聞かされてめちゃくちゃ納得した記憶があります。

田淵智也さんの作る曲は「情報量の多さ」と「言葉数の多さ」、加えて「一聴では聞き取れないほどのBPMの速さ」が特徴的。上記に挙げた「赤い罠(who loves it?)」はその3つの項目を満たしていていかにも“彼の楽曲らしい”といったところでしょうか。

それでは、このブログ標題の「君の瞳に恋してない」の話に戻ります。こちらの楽曲はBPMもそこまで速い訳ではなく、詞の情報量も多いわけではない。初めて聴いた時は「『UNISON SQUARE GARDENの曲』って感じ、あんまりしないかも…?」と少し困惑を混ぜたような、不思議な気持ちになりました。それはおそらく、“いつものユニゾンよりBPMがゆったりとしていて噛み砕かれている”から起こった現象だったのだろうと、彼らの楽曲群を様々な目線で見てきた今となっては思うのです。この曲に限ったことではありませんが、1音1音に乗せるフレーズが少ない曲に関しては言葉が飛ばされないようにしっかりと捕まえておかなければならないような気がしていて…。感覚的なものなので言語化が難しいのですが、自宅の雑誌棚を探してみると今回の記事にぴったりのものを見つけました。それでは、アルバム「MODE MOOD MODE」発売時期のインタビューを抜粋させて頂きます。「君の瞳に恋してない」について、当時の田淵智也さんは以下のように答えていました。

(この曲が出来上がった時は達成感が)ありましたね。 作曲もめちゃくちゃ凝ったコードを作ったので、斎藤くんにも「これは変えてくれるな!」 っていうお願いをして。BPMはアレンジ後に決めるんですけど、もうちょっと上げててもいい曲だってメンバーには言われたにもかかわらず、最初のデモが僕は好き過ぎたのでBPMを変えないでくれ!って押し通した拘りの曲でもあります。作ってる過程も含めて、達成感がありましたね。ただ、いつもそうなんですけど、僕が達成感を覚えてる曲って、別にチーム全員が 「革命的な曲ができた!」っていう雰囲気ではない印象から始まるんですよね。この曲好きなの俺だけか……っていうところから始まる(笑)。 そこからなんとか頑張るみたいな。これも、メンバーに最初持っていった時は全然普通って感じでしたよ(笑)

-「MUSICA」2018年2月号より

上記のインタビューを本棚から探す前にこの記事を書き始めていたんですが、田淵さんがわたしの書いていることと似たようなことをお話していらしてちょっと嬉しくなりました。詳しくはこの後の項目4(※項目3ではMVの話をしています)にて記しますが、もし「君の瞳に恋してない」が現在リリースされたものよりBPMの早い曲になっていたのだとするとセットリストにて前後に合わせる楽曲を選ぶ形になりそうです。

 

3.MVについて

 きましたー!MV、めちゃくちゃ好きです。UNISON SQUARE GARDENの歴代MVの中でも1番好きと言っても過言ではありません。わたし自身、MVが公開されたのを初めてリアルタイム(※深夜0時)に見届けたのも「君の瞳に恋してない」でした。

 ワンカット撮りのように進んでいく景色と、様々な色でカラフルに彩られた背景。メンバー個々の活躍シーンが散りばめられているのも大好きです。田淵さんはウォーキングマシンに乗ったまま踊ったり、斎藤さんはライブではなかなか間近にお目にかかれないほどの近さでギターソロをして下さったり、鈴木さんは爆イケ(!)なファッションでふわりふわりと舞ったり斎藤さんを紹介するような仕草をしたりトランペットを持って静止してみたり、ドラムならぬ身長の半分くらいの高さのドラム缶を叩いてみたり。とにかく遊び心に溢れた映像に仕上がっています。あと、この記事を書くにあたってMMM発売当初のインタビューを探していたら、鈴木貴雄さんが大体どの記事でも「(MVで)斎藤がりんごを投げています」と斎藤さんを推すようなコメントされていて可愛かったです…(わたしは鈴木さんのオタクなので意図せず鈴木さんの感想が多くなってしまいました…お許しください!)。

「君の瞳に恋してない」のMVは、楽曲中で何の楽器がどんな音で鳴っているのかは分からなくても「この人がこの楽器を演奏しているんだ!」と自然と覚えられる映像になっていると思います。ユニゾンのMVは演奏シーンが多い印象なので「君の瞳に恋してない」以外にも「世界はファンシー」「夏影テールライト」「カオスが極まる」辺りはその代表だと感じられます。バンドを観たり聴いたりする初心者にめちゃくちゃ優しい…!わたし自身、バンドを好きになったのはUNISON SQUARE GARDENが初めてだったのでとても有り難いことでした。

 

4.ライブセットリストでの役割について

 現在のUNISON SQUARE GARDENにおいて「君の瞳に恋してない」という曲は、いつしかフェスでもワンマンでも頻繁に披露されるメジャーな楽曲になりました。MVが制作されたアルバムリード曲という役割を持っているので当然といえば当然なのですが、セットリストは楽曲の順序によってリスナーが持つライブのイメージが変わってくることとなります。ここで、直近のワンマンライブ・対バンライブの中で「君の瞳に恋してない」がセトリ入りした公演について見ていきます。

 

○ 2019年開催 15th Anniversary Live 「プログラム15th」(※野外ワンマン)

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 「君の瞳に恋してない」は、かなり序盤の段階でセトリ入り。後半にワンマンの王道楽曲がずらりと並んでいるので、この公演での「君の瞳に恋してない」の役割はライブの熱を上げるためだと考えることができます。MODE MOOD MODEの発売は2018年1月と、この公演の約1年半前なのでまだ発売して比較的間もない時期。最近のユニゾンのライブでは割と後半に「君の瞳に恋してない」をセットリストに組み込んでいることが多いので、この公演では曲を育てていく意味としてセトリの前半入りをしたような気もしています。

 

○2022年開催 「fun time HOLIDAY8」(※対バンツアー)

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 お相手のバンド・アーティストがいらっしゃる対バンツアー「fun time HOLIDAY8」でもセットリスト入り。2022年はツアー「Patrick Vegee」の後半戦が年の始めの冬にあり、それが終了してからやってきた春に「fun time HOLIDAY8」が開催されました。本編ラストに「君の瞳に恋してない」が入ったことによりこの曲がセットリストの大団円のような立ち位置になっているのが分かります。舞洲と比べるとめちゃくちゃ成長したなぁ…と親のような気持ちになってしまいました。2022年には単体の曲としての知名度も上がっていたのでお相手のいらっしゃる対バンツアーにはうってつけの楽曲だったのかもしれません。

このツアーのことを書こうと少し振り返ってみたんですが、「君の瞳に恋してない」でわちゃわちゃしてた斎藤さんと田淵さんがラスサビの歌い始めに間に合わずマイクの位置が入れ替わったまま歌に突入し田淵智也さんの歌声(※コーラス)がめちゃくちゃでかい音で会場に響き渡ったハプニングと、鈴木貴雄さんがかっこよすぎて終演した瞬間にわたしがガチで腰を抜かした思い出くらいしか出てきませんでした。誰か記憶を補完してください…

 

○2022年-2023年開催 「fiesta in chaos」(※ワンマンツアー)

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 先日、オーラスまで無事に駆け抜けたツアー「fiesta in chaos」にもセットリスト入り。「fun time HOLIDAY8」では本編ラストだった「君の瞳に恋してない」でしたが、こちらのツアーではアンコールのラストに位置しています。本編の終盤はかなりカロリーを使う王道楽曲たちがずらりと並んでいるので、この中に「君の瞳に恋してない」を入れてしまうとごちゃつくからでしょうか。王道楽曲群が強すぎてつけ入る隙がございません…。 

「fiesta in chaos」は東京都にあるライブ会場、東京ガーデンシアターにてツアー最終公演を開催し幕を閉じました。この会場はバンドだけではなくジャニーズのライブでも使われることがあり(例:男闘呼組三宅健さんなど)、収容人数はおよそ8000人と聞いたことがあります。そんな大きな会場だと、きっとUNISON SQUARE GARDENのことをそこまで詳しくない方もライブにいらっしゃったことでしょう。本編をほぼMCなしで突っ切ってアンコールに突入、時間が秒で過ぎていく中でアンコールの最終曲が「君の瞳に恋してない」だなんて、そんな贅沢なことあるのでしょうか。見事に楽しかった思い出だけを持ち帰ることができる構成だと感じます。UNISON SQUARE GARDENのことをあまり知らない自分になって、初めてのライブをこのセットリストにしてみたいくらい羨ましいです。

 

 セットリストでの曲の組み合わせは、まるで服のコーディネートを選ぶことに似ている気がしています。お洋服の選び方としてトップスとボトムスの色の合わせ方、トップスはショート丈なのかロング寄りの丈なのか、ワンピースを着るとしてもそれに何を合わせるか等々…組み合わせを考える作業が発生します。ライブのセットリストは、それと同じように前後の曲との相性や物語を紡いでいく上での流れを考えられていると思うのです。特にUNISON SQUARE GARDENのセットリストはライブが終わった後に調べて見返してみると毎回唸るくらいに上手く、途中で飽きが来ることなくライブを最後まで楽しむことができます。「君の瞳に恋してない」が演奏される場面(※ツアー「Patrick Vegee」と「kaleido proud fiesta」のように演奏されないとしてもその理由)がしっかりと練られていることが1曲1曲を大事にするUNISON SQUARE GARDENらしいと感じますし、なんとも言えない幸福となっています。

 

5.最後に

 「君の瞳に恋してない」は“多幸感が溢れる”という意味で、田淵さんの曲の作り方はちゃんとリスナーに届いていて、曲の作り方として正解を辿っているんだと思います。伝えたいことを真っ直ぐには言わないのに、聴いている側にそれが伝わっているというのは凄い才能です。

「これからも都合よく魔法使いの魔法にかけられたい」

そう思いながら、わたしは彼らの曲の再生ボタンを次々と押していくのです。