音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

CRYAMYを心のお守りにしたい

 「○○さんは何のバンドが好きなんですか?」と訊かれた時、大抵の場合は少しばかり知名度のあるバンドの名を挙げてしまう。でもこれからはわたしの胸に秘めたバンドの名を挙げることがあると思う。知ってほしいのだ、CRYAMY(クリーミー)のことを。

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 フォロワーのブログをきっかけに、「とりあえず今のわたしは音源だけで良いバンドか判断できないからライブ行くか」と思い切ってチケットを取った6月9日の大阪公演。上の写真はその時のライブハウス(梅田TRAD)の看板だ。

ライブに行く数日前にCRYAMYのCDを買い漁って、ライブ前日に聴いた。どうしてこんなにもわたし自身のことが投影されているのかが分からなくて、気づけばノートに「CRYAMY、なんでこんなにわたしにぴったりなん?」みたいなことを書いていた。わたしの行動力に確信を持った瞬間だった。

次々と心に刺さる楽器たちの演奏と、Gt.&Vo.のカワノさんの独特な歌声。おそらく大衆ウケはしないし聴く人を選ぶバンドだけど、わたしはそれでいいと思った。だってこのバンドは、森の中で迷子になってしまった時にたまたま見つけた綺麗な洞窟だったり、道に咲いている誰も見つけないような小さな花だったりの、そういう類。

わたしはCRYAMYの全部をひっくるめて「あぁ、わたしじゃんこれ」と思ったし、運命の赤い糸とか何か見えないもので繋がれてるのかと思った。今はだいぶ抜け出せたけど一時期は本気で怖かった。

 

吐いたって病んだって

簡単に被害者ぶったって

誰もお前のことを大事なんかしないよ

彼らのアルバム「#4」の2曲目に収録されている「スカマ」より。MVやライブ映像、サブスクも無い曲なのでリンクが貼れないのが残念だが、歌詞だけでも紹介させてほしい。

おそらく一般的なバンドならリスナーに向けて優しい言葉を掛けると思うのだが、CREAMYは容赦もなく突き離す。“クリーミー”というキャッチーで可愛らしいバンド名とは裏腹に、奏でる音楽はキュートなんてものじゃなくむしろ逆。初めて聴いた時はあまりの衝撃で歌詞を何度も聴き直して歌詞カードまで見た。CRYAMYは無理矢理にでも現実を見せてくるバンドなんだなと、バンドに対するイメージが一気に固まったのもこの曲だった。もしかしたらCREAMYのGt.&Vo.であるカワノさんが自分に向けて作った曲なのかもしれないけれど、リスナーであるわたしがどう受け取るかは自由だ。

“可哀そうに思ってほしくて自分を偽っても、そんな簡単に人の心は動かせはしない”。わたしはそんな受け取り方をした。

 

 曇りの日や雨の日をを幸せと思えるようにするよりも、寄り添ってくれる音楽。CRYAMYの音を天気に例えるならば、そんな風にどんよりとしたものだと思う。実際、太陽がかんかん照りの晴れの日に歩きながらCRYAMYの音楽を聴いても全然似合わない。わたしは、蒸し暑くて少し雨が降っている中、傘を差して歩きながら聴くCRYAMYの音楽が好きだ。梅雨はとっくに終わってしまったけれど、雨の日にはCRYAMYを聴くことが確実に多くなった。

 

「WASTAR」。わたしがCRYAMYで最も気に入っている楽曲である。先述した通りCREAMYは現実主義なバンドだと思っているけれど、この曲は不器用ながらも紡ぐ言葉、CRYAMY特有のゴリゴリのロックサウンド、そしてカワノさんの歌声が不思議と優しく聴こえる。それは歌詞の随所に表れている。

「君のために生きる」と言う

君のためだけに出来る限り

そして何も変えられず暮れちまっても

当たり前に愛してるよ

6月9日のライブ本編終盤、カワノさんが「俺と、お前らに」と言って演奏を始めたこの曲。“愛してる”だなんて、ラブソングをよく演奏するバンドだけの言葉だと思っていた。CRYAMYって、普段はもっと攻撃的なロックンロールを奏でているバンドのはず。でも何故か可笑しくない。むしろこの言葉が格段に似合っている。泥臭いバントにこそ似合う歌詞。

下らなくなったら

何だって捨てればいいよ

別に命なんて懸けなくていいよ

こういう言葉を欲していたんだ、と直感で思った。CRYAMYに一目惚れならぬ一聴き惚れしたのは、確実にこの曲だった。当たり前のことなのに、というか当たり前すぎて誰からも言われたことが無かった言葉をくれたのだった。あの日のライブが終わってからCRYAMYで再生回数が1番多いのは確実にこの曲だし、勝手に人生の道標の楽曲になっている。何だか理由もなく不安になったり、どうしようもなく自分が揺らぎそうな時はとりあえずこの曲を耳から摂取することによって精神を保っている側面がある。

 

CRYAMYの楽曲たちは聴くと一瞬にして水槽に沈められるような音楽なのに、不思議と息が出来るような…言葉では表しづらいけれど、荒々しさと優しさを持ち合わせているバンドだとわたしは思う。聴覚から摂取する薬か寝付くために飲む強めの酒に近い感覚を覚える。後者は実際にやったことがないからわからないが。

 一般的に生きている人々よりどろどろで穢れているような、そんな心中を見透かしては綺麗にしていかなくとも寄り添って、いつの間にか泥を溶かしていってくれるようなバンドだと思う。CRYAMYって不思議な人たちで、刺さる人には刺さるし刺さらない人には刺さらないように出来ている気がする。そういうバンドは今世紀なかなか居なかった気がするからやっぱり必要不可欠なんだと思うし、わたしだって欲している。

 

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 少し余談になってしまうのだが、これはわたしがよく行くタワレコに貼ってあった宣伝ポスター。おそらく先日のライブで大阪に来てくれたついでに寄ってくれたのだと思うけど、いかんせんレジの横に貼ってあったので嬉しすぎて飛び跳ねた。そんなわたしは店員さんからすると不審者に見えただろう。店内のスペースをCRYAMYの為に少しでも空けてくれた感謝と、やっぱりまだ知られなくていいかもなとも思ったりした。知られるべき人に知れ渡っていてほしい。

CRYAMYを聴ける、CRYAMYに会いに行ける世界に生まれてわたしは幸せだ。出逢ってまだ日は浅いけれど確実に人生の一部になっているバンドよ、これからもどうぞよろしく。