音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

XIIX White White

遅ればせながら、ⅪⅨのデビューアルバム、White Whiteの話をしようと思う。このアルバムはⅪⅨのスタートとして最高だ。

 

以下の文章は以前わたしが書いていたもののコピーである。

 

 

 

 

 

 

ⅪⅨが紡ぎだす43分間の世界
~ⅪⅨ「White White」~

呼吸をすることさえ忘れていた。
感情が揺さぶられ、翻弄された
1枚のCDから溢れ出す音楽に。


UNISON SQUARE GARDENのギターボーカル 斎藤宏介と、様々なアーティストのサポートベースとして活躍する須藤優が新しくバンドを結成した。名前はⅪⅨ(テントゥエンティ)。そんなⅪⅨのデビューアルバム「White White」が1月22日にリリースされた。初めて聴くⅪⅨの音楽の世界。想像していた以上に酔いしれてしまった。今日はその世界を私なりの言葉にして文章に投影しようと思う。

 


森の奥深くの暗い洞窟へと誘われるようなWhite White。短いながらもこれから始まるⅪⅨの世界が楽しみでもあり、でもどこか薄暗く、綺麗。その世界に吸い込まれるかのようにアルバムは始まった。たった1分少ししかない1曲目から、この2人が只者ではないことがひしひしと伝わってくる。


それはⅪⅨの世界への入り口、Stay Mellowへと続く。秘密の部屋の鍵を開けた、不思議な世界へとその手を引っ張られる。この曲はMVと合わせて聴くのと音源だけを聴くのでは抱くイメージが変わってくる。音源だけだと想像が膨らみ、MVに増してさらに人間の変態性、フェチズムを感じることができる。また、斎藤の普段は見せない顔や歌声が聴けるのもこの曲の魅力で、ラップを歌う部分もある。メロディーに合っていないはずなのに、これが不思議と曲とマッチしている。強烈なインパクトを残し、この曲は去っていった。


続いてのLight&Shadowでは、ピアノのように弾む音と斎藤の囁くような声、渦巻く夜の世界…と色々な味が楽しめる。深みがある。沈んでゆく。さらに、サビ前のコインの落ちる音がポイントとなって、この曲の世界を加速させる。


“幻”という意味を持つ“Phantom”と同じ読みのFantomeでは、たった一度きりの男女の関係を見事に表現している。聴いた瞬間から良い意味でため息をつきたくなる。“溶ける 溶ける 甘い果実が”。たったこれだけの官能的な単語だけで容易に情景が想像できる。歌詞が直接的ではなく、あえて聴く側が想像を膨らませられるように出来ているのがとても良い。そしてこれは個人的に思ったことだが、曲の前半では女性側、後半では男性側の気持ちを表しているのではないのだろうか。歌詞は変わっていないのに、そう考えながら聴くと、なんだか斎藤の歌い方もなんだか少しだけ違ったように聴こえる。


Answer5は「欲しがる」「星がある」、「信じたい」「新時代」といったように、言葉選びが秀逸だ。ここまでの曲で、ⅪⅨはこんなバンドだと定義していたのがまるで崩れてゆくようなロックサウンドを鳴らしている。ギターが見せ場のパートもあり、ライブで見てみたいと思ってしまう。


長い螺旋階段を登るような音から始まるLIFE IS MUSIC!!!!!。この曲を初めて聴いたのはラジオからであった。ステップを踏むように軽快なリズムと時計の刻むテンポに合わせたというサビ。耳馴染みが良く、とても聴きやすい。


夕映えに紛れて。歌詞自体は少ないものの、そこから感じられる気持ちにじわじわと心を揺さぶられる。コーヒーを淹れながら聴くと良いかもしれないな。


E△7。抱き締めたいと思ったくらいに甘い。まるでミルクティーのよう。聴いた瞬間から今アルバムで一番好きな曲に君臨した。UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介ではない優しさがあるように感じる。彼の歌うUNISON SQUARE GARDENの曲でももちろん優しさは感じられるのだが、それとはまた別の顔である。“笑顔”ではなく“口元が緩む”という歌詞選びが好きだ。Fantomeでもあったが、彼の書く歌詞は必ずしも直接的ではないことが多い。普通では考え付かないようなその表現に物凄く惹かれてしまう。

 

インスト曲の5:03 PM、4:43 AMも素敵である。私はインスト曲、と聞くと敬遠しがちだったが、ⅪⅨの曲は違っていた。このアルバムに添えるような、濃くもなく薄くもないちょうど良い塩梅になっている。と同時に須藤のベーステクの凄さを知った。私は彼のことを知らなかったのだが、このアルバムでアレンジ力やベーステクから人間性に触れることができた。インスト曲とはいえ、思わず聴き入ってしまった。

 

ところで、このアルバムの曲の歌詞は全て斎藤宏介が手掛けている。彼はUNISON SQUARE GARDENで「スカースデイル」と「三日月の夜の真ん中」の詞曲を手掛けたことがあるが、ⅪⅨはその世界観とは全く異なっていた。今アルバムではキツめの言葉がばんばん飛び出したり、そうかと思えば優しさで突如甘くなったり。今までの斎藤宏介の王子様像とは真逆の姿を見ることができる。こんな歌も歌えるのか。凄い。この凄さを表す言葉が見つからず、ただただ圧倒されるばかりだ。

 

 

さて、アルバムの話に戻るとしよう。
XXXXX。エックスと読む。タイトルから感じたのは何か隠しているのかということだ。この曲のベース繰りも怪しさが見えてまた良い。遠くから叫んでいるような…解釈は分かれるだろうと思うが、この曲は私の手には負えない。凄さが集結しすぎている。
ボーカルから始まる、曙空をみつけて。外の景色が少し暗い時間帯にぴったりだ。夜明けのメロディー。今までに聴いたことのない曲調でとても魅力的だ。


ilaksa。この曲はあえて“問題作”と称したい。始まりは普通の曲と何ら変わらない。だが、曲が進行していくにつれ、決して踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れてしまったような気がした。それに気がついた時にはもう遅く、後戻りはできなかった。あなたは誰だ。そう考えているうちに曲が終わってしまっていた。彼の特徴的な声の高低差を活かした、溺れゆくように魅力的な曲になっている。


アルバムを締めくくる、Saturdays。街をゆくパレードのようだ。
これまでの物語で様々な出来事があった。嬉しいことも、楽しいことも、そうじゃないことも。それらをすべてひっくるめて、洗い流して、新しい自分になっていける。また素敵な土曜日が訪れますように。そのパレードの主は私の目の前まで来て、微笑んだ。そうしてこのアルバムは幕を閉じた。

 

 

全て通して聴いた感想としては、この二人はとんでもない人達だった、ということ。彼らの才能の2乗は言葉にできないほどの力を持つということ。ⅪⅨは必ず売れる。そんなパワーを秘めたWhite White。彼らのこれからの活躍が今から楽しみだ。

 

 

 

コピーしてから気づいた、よくこんだけの文章書けたな……??ちょっと引いた

 

ではまた。