音旅

文章の世界の住人。主に音楽のお話。

ヒトリエのことを更に好きになった夜-ヒトリエ「Summer flight tour」2022 8/7@神戸VARIT. ライブレポ

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※本記事にはヒトリエ「Summer flight tour」のセットリストバレがあります。

 

 ヒトリエが、わたしの地元 兵庫県にやってきてくれた。2022年8月7日、神戸VARIT.にて開催された彼らのツアー「Summer flight tour」に参戦した話を書こうと思う。

ヒトリエは今年の5月の大阪公演(※本来は2月開催予定だった分の振替公演)で初めて生のライブを観て今回で会うのは2回目だが、「このライブ絶対チケット欲しいな」とFCに入会し申し込んだ結果、スーパーミラクルすぎる整理番号を引き当ててしまったので今回ばかりは緊張しまくっていた。

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自分から最前ド真ん中の位置を確保して緊張して気分悪くなってるオタクわたしくらいだと思うよ

開演前に神戸VARIT.のスタッフさんが「ちょっと左に寄ってほしいです~、コロッケ1個分くらい」って言ってたのがおもしろくて少し緊張が和んだ。さすが関西のライブハウス。

映像で観ていたヒトリエが、5月に大阪のライブハウス 心斎橋BIGCATの後方の席で観ていたヒトリエが、こんなにも近くにいる。どうにか記憶を保とうとしたけど、オタクってステージとの近くなればなるほど記憶が無くなる生き物らしい。想定していたより楽しさが勝ってしまい、楽曲のここがどうだったとか細かい記憶が飛んでしまっている。どうかお許しを。

入場BGMが暫く流れた後、メンバーが登場する。シノダさんとイガラシさんのマイクの位置高くない?と思っていたら、お二人ともマイクの口元ぴったりに位置が合う。わたしが思っていたより身長が高くて驚いた。ミュージシャンみんな背高いじゃん…

シノダさんがカチッとエフェクターを足で踏み、音を止める。次の瞬間に聴こえてきたのは「Flashback,Francesca」のイントロだった。アルバム「PHARMACY」を引っ提げたツアーで、早速アルバムの1曲目で踊らせに来ている。ライブハウスだからというのもあるかもしれないが、ゆーまおさんのドラムがCD音源よりもしっかりと音を響かせているのが印象的だったし、イガラシさんはふわりと踊るようにベースを弾いていた。シノダさんはギターを弾くターンではない時はジェスチャーのように手を動かしながら歌い、ギターを弾く時は思いっきりかき鳴らす。前回行ったヒトリエのライブでも思ったのだが、ヒトリエはひとりひとりの技術力が抜群に高い。目が足りなくなる程に、メンバーそれぞれの動きが気になってしまうバンドだ。1曲目からそのことを実感させられて、ライブはこれからどうなるのかと期待で胸を膨らませていると、景色は2曲目「ゲノゲノゲ」に移り変わる。イントロの「そうそうこれです!待ってました!!」感が凄まじい。楽曲中何度も登場する“ゲノゲノゲ”というフレーズに合わせて、シノダさんが親指を床に向けたポーズを取るのが楽曲の攻撃性を増していて良かった。この曲からスーパーイガラシタイム(※ベースのイガラシさんが観客側に寄ってきて弾いてるところを見せてくれること。このライブ中にわたしが勝手に名付けた)がはちゃめちゃに増えた。隙さえあればイガラシさんのベースが目の前にある状況に、緊張していた身体も緩む。「これ本当に弾いてるの?」というくらいにイガラシさんのベースを弾く速度は速く、そして正確だった。わたしはベースのことはあまり詳しくないが、とにかくミュージシャンとしての実力が凄いことは分かった。

ぶっ続ける3曲目は「ハイゲイン」。1・2曲目までは順当にアルバム「PHARMACY」の収録順での披露だったのでこの流れを良い意味でどう壊すのか楽しみに3曲目のイントロを待っていると、聞き覚えのある棘棘しいギター音が鳴り響く。ヒトリエが5月に開催したライブでもお目にかかることができた曲だが、その時より確実に演奏技術が上がっていて驚いた。3か月間の練習密度がもの凄かったんだと思う。曲終盤のコーラスで3人の声が重なっていて胸が熱くなった。ヒトリエはここにいるぞと一心に主張するような景色をわたしの瞳がカメラのレンズになったかのように一生懸命、心に刻んだ。あの瞬間を、映像として残したかった。

 

 少しのMCを挟んで、4曲目は「風、花」。リリース時…というか、「ダンス・ダンス・ダンスール」というアニメのED主題歌だったので、とあるラジオで先行的にfull ver.が流れた時から好きだと確信していた曲。ライブハウスはピンク色のかわいらしい照明なのにゆーまおさんの力強いドラム譜面がギャップを生み出していて印象的だった。こちらの楽曲も前回のライブで観ることができたが、前回とは感じる感情が違っていた。前回は楽曲リリース直後での披露だったので生まれたてほやほやの姿を目撃したが、今回は洗練された演奏にて楽曲の成長した姿を観た気がする。ライブの度に成長した姿を観ることができるヒトリエの楽曲たちが興味深く感じるのだ。

あと、この辺りでシノダさんの歌声の変幻自在さに驚いた記憶がある。ロックチューンでは観客に雷を降らせるような痺れる歌声で、ふんわりとした優しい楽曲では柔らかくて温かみのある歌声を聴くことができる。CD音源でもそれは味わえるが、やはり生で観ると迫力が段違いだった。

このライブでの整理番号がミラクルすぎたので、初めてヒトリエの同期音の仕組みをじっくり生で観察できたのがこの「風、花」である。ゆーまおさんの上手側に小さめのPCがあって、そこから同期音を鳴らす仕組みのようだった。わたしがよく行くバンドのライブ(UNISON SQUARE GARDEN)ではドラマーさんの上手側にパッドのようなものがあり、そこを叩いて同期音を鳴らす…という仕組みなのでヒトリエの同期曲の仕組みは割とデジタル寄りなんだなと観察しながらこの日の思い出に刻んでいた。こういう違いに気づくことができるのもライブならではの面白さなんじゃないかと思う。

 

 シノダさんが、マイクスタンドに立てていたマイクをひょいと持ち上げハンドマイクへと変身させる。ヒトリエの楽曲の中でハンドマイクの曲は、わたしの知っているものだと「Loveless」か「SLEEPWALK」の2択。この日5曲目として選ばれたのは「SLEEPWALK」だった。正直「Loveless」も聴きたかったけど「SLEEPWALK」の展開が進むにつれて、そんな心の声は段々と掻き消されていった。夏の日に観る「SLEEPWALK」はマジでやばい。気温的に暑いのもあってシノダさんの暴れ具合が上がっていた。配信ライブでも前回のライブでも観た曲だが、同じ曲でも確実に演奏技術が繊細になっていてヒトリエの凄さを身に沁みて感じた。

ヒトリエのことを褒めすぎてバンド自体の凄さを表す言葉がそろそろ尽きてきそうなんだけど、本当に良いバンドなので自分の引き出しから頑張って語彙を探している。

 

 6曲目は、5曲目と同系統と思われる「電影回帰」。イントロのピコピコとした電子音はライブだとどうなるんだろう?と思っていたが、こちらの曲も同期音がズレなくぴったりと流れていた。ヒトリエはバントだけの編成ももちろん良いのだが、同期の有る曲もバンドの魅力が増して大好きだ。CD音源を聴いた時からドラムの音色が強くてこれはゆーまおさん大活躍だな、と感じていたのだが、生で観るとかなり力強いリズムを刻んでいて更に驚くことととなった。ゆーまおさんの叩くドラムを改めて好きになった。

 

 7曲目「イヴステッパー」はちょっと狂いますけど…!

ヒトリエのベストアルバムを買った後、かなりの頻度で聴いていた曲だからめちゃくちゃ嬉しかったし、ライブの一場面としてぶち上がったと思う。わたしはwowakaさんの歌うCD音源をたくさん聴いてきたのでシノダさんがこの曲を歌うのはほぼ初聴きだったのだが、この日のシノダさんは1音1音をはっきりと歌っている印象だった。あとゆーまおさんの叩くドラムが好きなので彼の音作りの話を何度も書いてしまうのだけど、この曲にはサビでドラムが一瞬だけ止まる場面があり、その場面を観られただけでもこの日のライブに参戦して良かったと思えた。音源だけだと何となくふんわりと飲み込めるけど、生で観るとやはり迫力が違っていて驚いた。

 

 8曲目に披露されたのは「極夜灯」。曲が進んでいくことに比例して苦しくなったのを音源を聴いて思い出した。曲の内容としてはそこまで暗いものではないんだけど、最前列で直に観たものに対して受け止めきれないほどにダメージが大きすぎたんだと思う。5月のヒトリエのライブでは、この(バラード)枠はおそらく「うつつ」になるのかなぁと思ったりしている。わたしは「楽しい!」という感情はライブ当日に置いてきてしまうタイプらしい。結局のところ、ライブから2か月経った今でも思い出せるのはこういうバラード曲の記憶だったりする。

今回のツアーはアルバム「PHARMACY」を引っ提げて回るということもあり、アルバム内に大人しい曲が少ないのでツアーのセトリもそうなるんだろうなと想定はしていた。「極夜灯」は夏という季節柄、外気温との差が激しかったのを覚えている。

 

 この雰囲気をどう壊して次へと進むか、それは9曲目のNeon Beauty」が答えだった。

ふんわりと会場を包むような独特な音色にうっとりと見惚れてしまう。世界観を一気にガラリと変えることができるヒトリエの凄さを改めてひしひしと感じた。1番では「きっと似合わない」、そして曲の終盤では「きっと似合うよ」と变化していく歌詞は音源を聴いた時から大好きだったから、手を挙げながらわたしも一緒に口パクで歌った。声はまだ出せないけれど、ライブの楽しいところってこういうところだと思う。

 

 「Neon Beauty」の後、少し長めのMCタイム。フォロワーのブログを読んで知ってはいたんだけど、シノダさんがマジで汗の話しかしなくて笑った。「なんでみんな(観客)そんな汗かいてないの?俺だけ汗だくなんだけど」みたいなことを言っていた気がする。

「ここからアッパーチューンがしばらく続きます、よろしく!」とライブの展開を教えてくれたのだが、ここからの5曲は体力が尽きるくらいに踊って暴れたので本当に記憶がない。とりあえず楽曲の順番と軽いレポは記しておく。見返しても意味が分からない作りをしていて最高。

 

10.「カラノワレモノ」

 イントロで照明がピンスポになり、ステージを白く照らす光景は配信ライブの同曲を思い出す。1番が始まった途端、演者は一切煽っていないにも関わらず何処からともなく曲に合わせた手拍子が沸き起こっていて、観客の温かさを感じた。このセトリの流れで演奏されるのは納得だし、セトリの作り方が上手すぎる。ベストアルバムの1曲目だったこの曲はわたし自身もかなり聴き込んでいたので、アッパーチューン初っ端のこの時点でかなりブチ上がることになった。

 

11.「flight Simulator」

 アルバム「PHARMACY」でのアッパーチューン。実際には無いのだけど、ミラーボールが回っているようなバッチバチの照明に照らされた3人の姿を今でも思い出せる。バタバタと駆け抜けていく展開が心地よかった。あっという間に終わる曲なのに残していくものが眩しすぎた。

 

12.「踊るマネキン、歌う阿呆」

 シノダさんが「お客様の中で、踊り足りない人はいらっしゃいませんかぁ~~!?!」という定番の煽りを始めてありがてぇ~~~~!という感情になり、それと同時に会場の熱気を感じた。前回のライブでは回収できなかったので観ることができて純粋にめちゃくちゃ嬉しかった。また観たいんですけどどこでやりますかこの曲…

 

13.「3分29秒」

 体力の終わりである。暴れすぎて暑くなった結果マスクが疎ましかったが、演者との距離が近いので頑張ってつけていた。ヒトリエが新体制になってから初めてのアニメタイアップ曲だった「3分29秒」、間近で観るとチカチカした照明の演出が相まってかなりの攻撃性があった。これでこそヒトリエの音楽だ。

 

14.「アンノウン・マザーグース

 「wowakaより愛を込めて!アンノウン・マザーグース!」

このシノダさんの宣言で泣きそうになった。これを聞くために、観るためにヒトリエに会いに来たんだと思ったし、そこにwowakaさんの影が一瞬だけでも見えた気がした。叫ぶように歌う3人のコーラスがヒトリエというバンドの形を表していて、この日1番良い景色を見せてもらった。

 

 連続でのアッパーチューン楽曲たちが一旦落ち着き、終盤戦に突入していた15曲目は「strawberry」。バンドのライブの終わりが近くなるにつれて、落ち着きを取り戻す為にはどこかでゆったりとした曲を入れないといけないとわたしは思っているのだが、これは天才のセットリストすぎて思わずため息が漏れた。本当に、「strawberry」、めちゃくちゃ、好きです。シノダさんの優しい歌声に触れることのできる楽曲だと思うし、心なしか演奏までもが柔らかく聴こえた気がする。

アルバムツアーだからそりゃ演奏されるとは思っていたけど、CD音源を初めて聴いた時から「strawberry」が好きすぎて演奏されたことが嬉しすぎて踊っていたら、後方は見えなかったのだがこの曲で暴れていたのはわたしだけだったらしい。なんならその瞬間をライブハウスの後方からカメラマンさんに撮られていたらしく面白かった。ヒトリエInstagramにアップされていたのを後日それを見つけた時はわたしが分かりやすいオタクすぎてめちゃくちゃ笑ったので、ご興味ある方は写真に捉えると踊っている為 ブレッブレになった最前列オタクを探してみるのも良いと思う(?)。わたしは「strawberry」ガチ勢なのでまたすぐにでも聴きたいけど、暫くはやらなさそうだな…という予想を立てている。ワンマンのセットリストの隙間にでも挟んでほしい。

 

 束の間のMCタイム②。シノダさんは「夏は好きだけどセミは嫌いです」みたいな話をしていた。演奏ゴリゴリにかっこいいのにゆるい話するな~と思っていたら、次の曲の演奏で度肝を抜かれることになる。

 16曲目はアルバム「PHARMACY」のラストに収録されている「Quit.」。シノダさんが歌い始め、ゆーまおさんのドラムが鳴り、イガラシさんのベースが響き渡る。暦の上では8月の初旬だったけど、このライブでわたしの夏のイベントは一旦区切りだったので、この「Quit.」を観た時には蒸し暑い夏の残り香のあの感じを身体全体に纒ったようだった。音楽を聴いてこんな不思議な感情になるのは初めてだった。

 

 本編ラスト、17曲目は「ステレオジュブナイル」。ヒトリエってかっこいいだろ!と見せつけられるような、めちゃくちゃなように見えて音が整っている演奏に、会場内の熱が高まっていた。わたし自身もドキドキが収まらなかった。こんなん聴いてるのわたしだけ、かもしれない。でもそんなヒトリエが大好きだ。大好きだし、「あぁ、なんかわたしはこのバンドを一生追いかけるんだろうな」と思った。どこにも根拠はないけど信じたい。

 

 3人が退場した後、すぐにアンコールの拍手が巻き起こる。本編終了からそこまで時間も経たないうちに、シノダさん・ゆーまおさん・イガラシさんが再び登場した。わたしは髪の長い男性が好きなので(?)、アンコール登場時に髪を軽く結っていたイガラシさんの姿にかなり性癖を狂わされた。最前列の女にはちょっと刺激が強すぎませんか…というかイガラシさんってよく見なくてもめちゃくちゃかっこいいな…

 「夏といえばなんですか?」と問いかけるシノダさん、「エンドレスサマーとか…あるじゃん」と答えるゆーまおさん、そんな2人を暫く見守るイガラシさん。かっこいいバンドなのに、トークコーナーへと移行したら一気に緩くなるギャップが胸を突き刺しそうだった。めちゃくちゃ面白かったからラジオ番組とか受け持ってほしい、週1でヒトリエトーク聴きたい。

余談だが、ゆーまおさんが「夏といえば…ハルヒとか、あとひぐらし(のなく頃に)とかね」と言った時に、わたし自身がひぐらしのオタクなので首がもげるくらいにぶんぶん頷いてしまい、シノダさんに「めっちゃ頷いてる人いるじゃん」って言われたのは良い思い出です。

 

 そんなゆるゆるなトークから一変。アンコール1曲目は「curved edge」。シノダさんのギターの音色がトークでほんわかとした空気を切り裂くようだった。今まで配信ライブと5月のライブとでこの曲は観たことがありこれで3度目だったが、この日の「curved edge」が1番かっこよかった。セットリストの順番や場の温まり方の違いもあるとは思うけど、技術の進化をこの日は存分に感じた。

 

 アンコール2曲目は「インパーフェクション」。最初から最後までセットリストが“好き“”に溢れすぎてもうわたしの理想か?と思った。(但しまだ「ポラリス」は回収できていないからお願いしますよシノダさん…の気持ちである。実を言うと本編は味が濃かったから「ポラリス」はアンコールでやるんじゃないかと思っていた節があった)。

最後の曲、観客の心に置いていく置き土産としてインパクトが強すぎる。曲自体は決して長いものではないが、3人の残った体力を振り絞るような演奏は目に焼き付いて離れなかった。

 

 

 目の前にいるシノダさん、イガラシさん、ゆーまおさんは映像で観るよりも等身大の姿だった。等身大…といっても、わたしの感じ方が変わったのかヒトリエが歩み寄ってくれたのかは分からないけれど。

以前に行ったライブではステージと席が離れていたこともあり、「会う」とか「姿を見に行く」というよりは「ヒトリエの音楽に身を委ねる」という意識が強かったのだけど、今回はステージまでが1mほどの距離。少し頑張って手を伸ばせばギターやベースに触れてしまうくらい、メンバーが目と鼻の先にいた。画面越しで観る彼らはどこか大人っぽく飄々とした、姿かたちが掴めないイメージが強かったけれど、ライブハウスでこうして姿を間近に感じるとしっかりとした人間っぽさや泥臭さ、「そこに立って楽器を演奏している」という事実を身体で感じることができた。大袈裟かもしれないが、ヒトリエがわたしの一生涯に関わるバンドだと証明してくれたような夜だった。わたしの人生にはヒトリエが必要だ。

次にヒトリエに会うのは10月。今度はライブハウスではなく屋外のフェスイベントだけど、場所が変わってもヒトリエヒトリエの音楽を、芯を揺らがずに鳴らしてくれると信じている。今からとても楽しみだ。